車について(1)~北海道の秘密~

投稿者: itogen
4月 30 2011 年

さて、車についてつぶやきます。

昔やったゲーム(ダビスタ)から得ただけの知識ですが、

馬には芝向きの血統だとかダート向きの血統だとか、そういうのがありますよね。

恐らくうちは徒歩向きな血統です。

弟だけでなく父親にも母親にも廃車体験(?)があります。

妹だけは廃車体験がないのですが、そのかわりに免許もありません。

そんなわけで、現在家族内に車持ちはいません。

どこかに車で出かけたいと思った時には

他人(レンタカー屋)に車を借りることになります。

 

初めてレンタカーを運転したのは、大学時代に家族で北海道に行った時です。

帯広到着と函館出発だけが決まっていて

後は飛行場からレンタカーで自由に移動できるプランで、

免許持ちの父母と自分が順番で運転することになっていました。

最初に運転することになったのは自分でした。

どこまでもまっすぐに伸びる広々とした道路。

あたりは緑一面の気持ちのよい初夏の北海道でした。

他の走行車も殆どなく、交差点や信号もなく、人通りもありません。

速く走れば早く目的地につくことが出来ます。

スピードメーターは一般道なのに100km/hを超えていました。

 

突然、見渡す限り何もなかったはずの道路のはるか前方に、

なにやら黒い点が出現しました。

スピードを緩めつつ近づいていくうちに、

それが白いヘルメット状のものを頭に乗せ、

青い服を身にまとった生き物であることがわかってきました。

要するに警察官でした。

 

遥か手前でスピードを落としていたので安心し、

「何かあったんですか?」と爽やかに(※自分基準)尋ねる自分に対して

その警察官が笑顔で口にした言葉は、

「今日から試験的にレーダー(?)を使って違反をチェックすることになったんですけど、

あなたその第一号ですよ」

でした。

思わず「そうですか、ありがとうございます」とお礼を口にしましたが、

リアクションが間違っていたような気もします。

自分は日々を慎ましやかに送る善良な小市民ですから、

警官に捕まったのは初めてで、軽く動揺していたことは否めません。

従順な羊のように指示に従って書類記入を済ませた後に

手渡された違反切符には¥18000と書いてありました。

車に戻り、切符をひらひらさせつつ

「罰金一万八千円だって。一人六千円か、痛いねえ。」

とさりげなく3で割ってみましたが、当然のようにスルーされました。

母親には「だからあんまりスピードあげないように言ったじゃん」と言われました。

30分前には

「もうちょっとスピード上げても大丈夫でしょ?いっちゃえいっちゃえ!」

とか言っていたのですが、

何を言っても無駄なような気がしたので黙って頷いておきました。

 

今思い出しても、あれくらい北海道なら全然制限速度内なのではとも思うのですが、

国が前もってそう定めている以上、そのルールには従わなければなりません。

違反切符を自分が受け取った後に

「何かあった場合にはその時運転していた人間が全責任を負うことにする、

だからさっきの罰金は源負担」

が母親により提案され、自分以外の全員一致で即可決された時には

罪刑法定主義」とか「法の不遡及」とかいう単語が脳裏をよぎりましたが、

あまりにもテンションが下がっていたし、そもそもうちの家族は

「人の言うことは全く聞かないが人には自分の言うことを聞かせる」

という困った生き物の集合体なので、それを口に出すことはしませんでした。

売られていく子牛のような悲しそうな瞳で父親を見つめてみましたが、

軽く視線を逸らされました。

思わずビーフジャーキーを投げつけてやりたくなりましたが、

手元にビーフジャーキーがありませんでした。

 

仕方がないのでとりあえず18000円は最初からなかったものとして諦めることにしました。

牧場で動物と戯れたり、おいしいチーズケーキを食べたりしているうちに、

徐々にテンションも復活してきました。

札幌が近づいてきた頃に、また自分が運転する番が回ってきました。

大通公園で車をとめて、公園を軽く散策し時計台を見た後で

北海道スイーツ老舗の雪印パーラーで何か甘いものを食べようということになりました。

一点の曇りもない完璧な計画です。

雪印パーラーです。本場北海道の雪印パーラーではどんなものが出てくるのでしょうか。

テンションはMAXに達していました。心拍数は200bpmあたりまで上がっていたと思います。

 

まずは大通公園に侵入して写真を撮ろうということになり、

なぜかカメラが自分の所に回ってきました。

この辺り扱い的にどうかなと思わなくもないのですが、

雪印パーラーのことで幸せな気持ちになっていたので

とりあえず気付かなかったふりをして、

そのへんにいたそれなりに親切そうなおじさんに写真を頼むことにしました。

 

実際その方はこちらが期待した以上に親切でした。

快くOKして写真を撮ってくれた後、

「せっかくだから北海道の秘密を教えてあげよう」と仰いました。

 

正直「何がせっかくなのか分からないし、北海道の秘密とか確かにちょっと興味はあるけど

雪印パーラーに比べたら比較的どうでもいいです」という言葉が喉元まで出かかっていましたが、

明らかに話したそうな様子だったので、写真を撮っていただいたお礼に聞いてみることにしました。

 

北海道が抱えていた秘密は想像をはるかに超えるものでした。

「お土産には木彫り熊を買いたくなるだろうが、予想以上に重いから持ち帰るのが大変でお勧めしない」

とか、

「小樽はオルゴールで有名だが、かなり多くが小樽以外にある下請け工場で作られているであろう」

とか、

「函館の朝市では『朝茹で』と書かれたカニが売られているが、

昨日の朝茹でたものがあるかもしれないから気をつけろ」

とか、 大部分がおじさんの妄想で構成されているとしか思えない「北海道の秘密」を沢山知った頃には、

既に1時間が経過しており、家族はいなくなっていました。

 

後で聞いた所、予定通り時計台を見て、雪印パーラーで楽しい時間を過ごしていたとのことでした。

「今からもう一度行ってみない?」と提案してみましたが、賛同者はいませんでした。

諦めて車のあった場所に戻ってみると、今度は車がいなくなっていました。

そして車がかつて存在していた場所に、

チョークのようなもので書かれた妙な数字と文字の羅列を発見しました。

札幌西警察署という文字が読みとれました。

 

現行ルールは「何かあった時にはその時運転していた者が全責任を負う」です。

今回は「何かあった時」に「運転者」がいなかったと言えますから、

駐車違反の罰金+レッカー代+タクシー代=約4万5千円を3人で分担するのか、

念のため聞いてみました。

 

「駐車時に何かあった時にはその前に運転していた者が全責任を負う」

という新ルールが提案され、反対者が1名しかいなかったため即可決されました。民主主義最高です。

 

札幌西警察署内で、「記念撮影しよう!記念撮影!」とはしゃぐ父親に写真を撮ってもらいました。

警察署内の緑の掲示板を背にして、何故か人差し指と中指を立てた笑顔の自分が写っていますが、

よくみると目がうつろでした。

 

その後小樽に行ったはずなのですが、

ショックで軽い心神耗弱状態にあったため、ほとんど覚えていません。

オルゴール売り場でずっとオルゴールを聞いていたような気がします。

結局時計台にも雪印パーラーにも行けなかったということだけは鮮明に覚えています。

 

次の目的地を決める際、気球に乗りたいという気持ちが高まってきました。

スピード違反も駐車禁止もレッカー移動もない乗り物に乗りたかったのだと思います。

他の者は全く乗り気でなかったのですが、

ここぞとばかりに得意技を繰り出し、了承させました。

一部の人は知っていると思いますが、得意技というのはジャンピング土下座のことです。

 

気球の順番待ちをしている間、

頭の中では小学校の頃に習った「気球に乗ってどこまでも」が繰り返し流れていました。

ここで実際に歌いださずに我慢したのはさすがだったと思います。

気球に乗ってどこまでいけるのか、どうやって元の場所に帰ってくるのか。

気球にジェット的な何かがついていて、その力で戻ってくるのだろうと思っていたのですが、

違っていました。

綱がついていて、単に真上に上がったあと、まっすぐ下に降りてきたのです。

眺めはよかったしかなり楽しかったのですが、他の者には少し文句を言われました。

それはあの黄色くて丸いのに言ってくれ、と思いましたが、口には出しませんでした。

 

あと、旅行から帰ってきた後、違反の累積で運転免許停止通知がきました。

 

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